２　水の電離と水溶液のpHｈ

【水の電離と水のイオン積】

　水はごくわずかではあるが，次のように電離している。

　　　〔　H2O　⇄　H＋ ＋ OH－　〕

　25℃の純粋な水では，水素イオンのモル濃度［H＋］と水酸化物イオンのモル濃度OH－］がともに〔　1.0×10－7　〕mol/Lである。

　（　[　]はモル濃度を示す。[H＋]ならば，H＋のモル濃度の意味　）

 

　　　〔　［H＋］＝［OH－］＝1.0×10－７mol/L　〕

 

　また，［H＋］と［OH－］の積を水のイオン積Kwといい，25℃では，Kw ＝[H＋][OH－]＝〔　1.0×10－14　〕(mol/L)2となる。

 

【溶液の液性】

水溶液が何性であるかということを水溶液の液性という。水溶液の液性には中性，酸性，塩基性がある。水はわずかに電離しているので，水溶液には必ずH＋とOH－が存在する。水溶液の液性は，［H＋］と［OH－］のバランスによって決まる。また，溶液でも水のイオン積Kw＝1.0×10－14(mol/L)2が成り立つ。(H＋，OH－の量が変わるとH2Oの電離の→のや←が起こり，常に[H＋][OH－]＝1.0×10－14が成り立つように調節されるから)

 

25℃では，中性　：［H＋］＝［OH－］＝1.0×10－７mol/L

酸性　：［H＋］＞［OH－］⇒　［H＋］＞1.0×10－７mol/L

塩基性：［H＋］＜［OH－］⇒　［H＋］＜1.0×10－７mol/L

 

【pH（水素イオン指数）】

水溶液の酸性・塩基性の強さは，水素イオン濃度［H＋］の大小によって示すことができる。この場合に用いられる数値がpH（水素イオン指数）である。［H＋］は　10－n　の値なので，pH は次のように求める。

 

　　　　［H＋］＝ １×10－nmol/Lのとき，pH＝n　（　pH＝－log10［H＋］ということ）

 

pH と溶液中の水素イオン濃度［H＋］，水酸化物イオン濃度［OH－］の関係は次のようになる。（［OH－］は水のイオン積Kw=[H＋][OH－]＝10－14から求められる。）

 
 
 

例題　次の各水溶液の水素イオン濃度とpHを求めよ。Kw=1.0×10－14［(mol/L)2］とする。

（1）0.0010mol/Lの塩酸HCl　（2）0.050mol/L硫酸H2SO4水溶液

（3）0.10mol/Lの水酸化ナトリウムNaOH水溶液　（4）0.0050mol/L水酸化カルシウムCa(OH)2 水溶液

（5）0.10mol/Lの酢酸CH3COOH水溶液（酢酸の電離度をα＝0.01とする）

 

(1)　HCl 1molからH＋は1mol出る。

　［H＋］＝［HCl］＝1.0×10－3〔mol/L〕　⇒　pH＝3

(2)　H2SO4 1molからH＋は2mol出る。

　［H＋］＝2×［H2SO4］＝0.050×2＝1.0×10－1〔mol/L〕　⇒　pH＝1

(3)　NaOH 1molからOH－は1mol出る。

　［OH－］＝［NaOH］＝1.0×10－1〔mol/L〕

　［H＋］＝Kw／[OH－]＝1.0×10－14／(1.0×10－1)＝1.0×10－13　⇒　pH＝13

(4)　Ca(OH)2 1molからOH－は2mol出る。

　［OH－］＝2×［Ca(OH)2 ］＝0.0050×2＝1.0×10－2〔mol/L〕

　［H＋］＝Kw／[OH－]＝1.0×10－14／(1.0×10－2)＝1.0×10－12　⇒　pH＝12

(5)　CH3COOH1molからH＋は1mol出る。　…　電離度1（完全に電離する）なら

　　CH3COOHは電離度が0.01（1％だけ電離する）なので

［H＋］＝［CH3COOH］×0.01＝0.10×0.01＝1.0×10－3〔mol/L〕⇒　pH＝３